本日の近所のスーパーの特売品は、クックドゥシリーズである。お手軽に本格中華が楽しめるこの商品は、主夫の味方だと思う。
ワタクシは自分の好物である、チンジャオロース1個148円の2個パックを手に取り、ついでに晩酌のお供ポテチ(88円)を素早く買い物カゴに入れてレジに向かった。
巨人化した松下由樹みたいなレジのおばちゃんがピピッとやって、合計を見ると635円であった。オカシイ。
ワタクシは天才的な暗算能力で、どんなにたくさん買っても合計金額を頭の中で算出した状態でレジに向かっている。この時、脳内計算機には414円という計算結果が出ていたのであるが、200円以上の差がある。
ワタクシは嫁にいじめられ過ぎて、ついに脳が故障したかと思い、自己修復回路を作動させ、レジの前でフリーズ状態となった。
ワタクシの動作が緊急停止したのを見た松下由樹は、何かを悟ったのであろう。仲間に
「お値段チェックお願いしま~す!!」
と絶叫した。
レジには長蛇の列ができ始め、ワタクシには周囲から、ケチな客という冷ややかな視線が容赦なく注がれた。
数分後、やっとのことで調査兵団のおばちゃんが帰還し
「148円で~す!」
とまたしても絶叫した。おまえは走れメロスか!恥ずかしいわ!
やっと、この地獄から解放されると思いきや、今度は松下由樹が何を思ったのか、
「254円になりま~す!」
と自己の前言を恥ずかしげもなく修正した。
そして、ワタクシの脳内はまたしても混乱した。クックドゥチンジャオロースは1個148円であるのだから、それが2個で296円+税。この時点ですでに計算結果が合わない。
もし万が一ワタクシが間違っていたとしよう、ということは254円マイナス88円(ポテチ)で166円。つまり、クックドゥが1個83円で買えることになってしまう。
そんな事実が判明したら、今レジに並んでいる血に飢えた大阪のおばちゃん連中はダッシュでクックドゥの奪い合いを始めてしまうではないか!情報を聞きつけた近所のおばちゃん達もママチャリで巨人のように大挙して押し寄せるだろう。
いや、ちょっと待て、しかし、このまま254円を払って店を出たとしよう。そうすれば、レジ金額が間違っていると知りながら店を出た時点で、未必の故意が成立しワタクシが詐欺罪に問われる可能性がある。
ヤヴァイ兵長!でも待てよ、本当にクックドゥが2個で148円の可能性もある。その可能性がありながら、長蛇の列ができてテンパっているレジの松下由樹に今さら、値段が安いんじゃない?と指摘したところで、何になるというのか?
あらゆる可能性を自己修復を終えた脳内シュミレーターで約3秒ほどでシュミレーションし、ワタクシはそのまま無言で支払いを終え店を出た。
これで明日の早朝、警察の方がみえて
「マスヲさん、わかってるよね?」
と言われれば、ワタクシは大人しく
「申し訳ありませんでした。」
とお縄につくつもりだ。
「せめても、子供の前で手錠はカンベンしてください。」
とお願いすれば、人情深い大阪の刑事さんならわかってくれるだろう。
そんなことをムダにメモリを多く積んでいる脳内シュミレーターでシュミレーションしながら、夕闇せまる街をトボトボと家路に着くのであった。
我が家の今夜の夕飯はチンジャオロースである。