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嫁を動かす

HOW TO WIN WIFE AND INFLUENCE PEOPLE

リンカーンならどうしただろうかと考えた件

President Barrack Obama meets with senior advisors in the Oval Office
President Barrack Obama meets with senior advisors in the Oval Office / U.S. Embassy Jakarta, Indonesia

アメリカ大統領執務室には、二人の元大統領の肖像画が掲げられている。イスに座った大統領の正面には初代ジョージ・ワシントン、その左側に16代エイブラハム・リンカーンである。

 

先日、新しい大統領が誕生した。これから少なくとも4年間、彼はこのイスから重大な決定を下すことになる。時には、難題に頭を抱えることもあるだろう。

 

机に頬杖をついて悩む彼の眼には、これまで何人もの大統領がそうしてきたように、リンカーンの姿が映ることになる。


D・カーネギー先生は、リンカーンの研究者としても有名である。なので、名著「人を動かす」にもリンカーンの話がたくさん出て来る。

 

冒頭で紹介した肖像画についてもこんな形で紹介されている。

 

セオドア・ルーズヴェルトは、大統領在任中なにか難局に出くわすと、いつも、居室の壁にかかっているリンカーンの肖像をあおぎ見て、

「リンカーンなら、この問題をどう処理するだろう」

と、考えてみるならわしだったと、みずから語っている。

 

「人を動かす」24ページより引用

では、リンカーンとはどんな人物であったのだろうか?

 

世界史の教科書には奴隷解放宣言をした人くらいしか出てこないが、「人を動かす」を読んでいくと、その人となりがとてもよく理解できる。そして、アメリカ人に長く愛されるワケも見えてくる。


1809年、ケンタッキーの森の中にある丸太小屋で産まれた彼は、貧乏に挫けそうになりながらも、船乗り、雑貨屋の店員、測量士、民兵などをして暮らした。転職したワケではなく、失業して食っていくために新しい職についた結果である。弁護士になったのは30過ぎてからの話でこれも生活のためである。

 

無教育で貧乏な一食料品店員を発奮させ、前に彼が五十セントで買い求めた数冊の法律書を、荷物の底から取り出して勉強させたのは、自己の重要感に対する欲求だった。この店員の名は、ご存じのリンカーンである。

 

「人を動かす」36ページより引用

ちなみにこの法律書は、道端で買った盗品の荷物に入っていただけであったことが、ワタクシの研究で判明している。

 

偉人として扱われる彼ではあるが、若い頃はイケイケで対立する人をやっつける手紙をわざと道に落としたり、新聞に公開したりしていた。が、やりすぎて恨みを買って殺されかけたことがあった。そのことがきっかけとなり、人を非難するようなことを一切しなくなった。そして、人の心を捉える術を身につけて出世していくことになる。

 

「人を裁くな ー 人の裁きを受けるのがいやなら」

というのが、彼のこのんだ座右銘であった。

 

「人を動かす」21ページより引用

ワタクシも失業を繰り返しているので、リンカーンのように偉人になる可能性にあふれているが、もう一つ共通点がある。そう、悪妻を持っていたことである。


リンカーン夫人の悪妻伝説については、この一文を紹介すればスグにわかるだろう。

 

「夫人のわめき声は通りの向こうまで聞え、絶え間なく近所中にひびきわたっていた。乱暴を働くことも、しばしばあった。」

 

「人を動かす」326ページより引用

こんな感じでとにかく口うるさい女だったのだ。一番ひどい話だと、ある日、夫人が朝食中になぜかブチ切れして、リンカーンにアツアツのコーヒーをかけたとある。なかなかキテいる嫁さんである。

 

しかし、悪妻を持つと崇高な考え方に行き着くことを、ワタクシを始め過去の偉人達も示してくれる。嫁に小便をかけられたソクラテスは「悪妻を持てば哲学者になれる」と迷言を残した。

 

悪妻を持たない人はなぜだか理由はわからないだろう。これだけは言えるが、理不尽に耐えるにはより大きなモノにすがるしかないのである。


かくして、彼は偉人への階段を登り始める。

 

・嫁が怖いので家に帰らず仕事に没頭する。

・嫁にキレられないように注意深く自己の言動を慎むことで、周りの評価を得る。

・怒っている相手への対処が上手くなる。

 

彼はあるとき、同僚とけんかばかりしている青年将校をたしなめてこんな言葉を残している。

 

 「自己の向上を心がけているものは、けんかなどするひまがないはずだ。おまけに、けんかの結果、不機嫌になったり自制心を失ったりすることを思えば、いよいよけんかはできなくなる。こちらに五分の理しかない場合には、どんなに重大なことでも、相手にゆずるべきだ。百パーセントこちらが正しいと思われる場合でも、小さなことならゆずったほうがいい。細道で犬に出あったら、権利を主張してかみつかれるよりも、犬に道をゆずったほうが賢明だ。たとえ犬を殺したとて、かまれた傷はなおらない」。

 

「人を動かす」164ページより引用

この言葉を読むと、ワタクシの嫁に対する態度と奇妙な一致をみることができる。リンカーンの人間性は悪妻が形作ったといってもいい気がしてきた。


大統領となった彼は、いよいよ偉人としての活躍を始める。自らを嫁から解放するかのように奴隷解放を宣言し、南北戦争を戦う。巧みな人心掌握術により言うことを聞かない将軍達を操り、北軍に勝利をもたらす。

 

激戦地ゲティスバーグにて未だに残る名演説、government of the people, by the people, for the people”人民の人民による人民のための政治”を説き、民主主義を人類史に打ち立てた。

 

ワタクシには、peopleがwifeに見えてしょうがない。”嫁の嫁による嫁のための支配”この痛烈な皮肉がこの演説には隠されているのだ。悪妻を持つ者にしか理解できない言葉なのである。


1865年、彼は凶弾に倒れアメリカ史上初の暗殺された大統領となる。安宿に寝かされ死を待つ彼のそばで側近がつぶやく。

 「ここに横たわっている人ほど完全に人間の心を支配できたものは、世にはふたりとはいないだろう」

 

「人を動かす」19ページより引用

この言葉が彼が身に付けた高潔な人間性を表していると言えるだろう。


はたして、彼は幸せだったのだろうか?悪妻を持ち、4人の子供をもうけたが3人は成人する前に亡くなっている。D・カーネギー先生は彼のこんな言葉も紹介している。

 

「およそ、人は、幸福になろうとする決心の強さに応じて幸福になれるものだ」

 

「人を動かす」98ページより引用

たぶん、悪妻を持つ者が最後に行き着く境地なのだろう。ワタクシはまだまだこの境地に辿り着いてはいないが、なんとなく、不幸でなければここに辿り着けない気がする。


さて、若くて元モデルのキレイな奥さんを持つトランプ大統領は、悪妻持ちの偉人の肖像画を眺めて、「リンカーンならどうしただろうか?」と悩む日が来るのだろうか。

 

ワタクシは名著「人を動かす」を脳内保存しているため、肖像画を眺めなくても正しい判断ができるようになってきた。嫁にひたすら頭を下げ、悪妻を持つ者の定めを受け入れ偉人を目指すのだ。

 

ワシントンにあるリンカーン記念館には、彼が二度目の就任演説で語った言葉が刻まれている。

 

何人にも悪意を抱かず、万人に慈愛をー”

 

この精神があれば、家庭を円満にし、世界をも幸福にすることができるだろう。