嫁を動かす

HOW TO WIN WIFE AND INFLUENCE PEOPLE

ワイフにシゴかれながら夜勤で洗濯をした件

f:id:move-wife:20160628172836j:plain

子供と親の信頼関係に「安全基地」という概念がある。安全な親の懐という基地があるからこそ、子供は基地から出て外の世界を自由に探索できる。

 

そして、怖くなったら戻ってこればいいと思える場所が安全基地でもある。厳しいときの心の拠り所として機能することにより、子供は危険を乗り越えて成長していく。 


アンニョイな梅雨の夜。基地で大切に守っているハズの娘氏が、突然の高熱を出した。夜中に迫撃砲が着弾したかのように、ゲロを吐いたため基地のアラームが鳴り響いた。

 

飛び起きてベッドパットを変えて、酸っぱくなった布団やらを風呂場で洗ってハイターに漬け、氷枕を出して冷えピタシートを貼ってと、基地内での内勤もハードである。基地司令のワイフ軍曹は指揮を執るだけで、兵隊はワタクシとネコのみであるため、全部やんなきゃいけない。

 

娘を寝かせて、ひと段落したと思ったら、深夜に二度目の迫撃砲が着弾。また娘氏がゲロを吐いて、同じ作業を繰り返した。中東ならぬ、中年の春はまだ遠いようである。


翌日、眠たい目をこすりながら洗濯機を回し、愛車の96式無動力人員運搬用自転車(通称:ママチャーリー)に乗り、娘を野戦病院に運ぶ。薬局で大人のADHDパンフレットを熟読してクスリをもらい、帰宅しておかゆを作って洗濯物を干して、落ち着くヒマもない。

 

砂漠の地平線に夕日が沈む頃、ワイフ軍曹の食事の支度をする。軍曹はお腹が空くと不機嫌になるため、食事の時間は厳守である。タラコの配分に文句を言いながら食事をしていると、辺りは暗闇に包まれ基地の一日は過ぎていく。

 

忙しい勤務を終えて、やっとこ眠りについたと思ったら、激務に耐えかねたネコ三等兵が、なぜだかワタクシの枕の上に嘔吐し、二夜連続のアラームが鳴り響いた。

 

そんな戦友のネコ氏も、我が家が安全基地であり、もうカラスに突かれる公園には戻りたくないだろう。枕をハイターに漬けながら、この基地を守っていかねばならぬとサマーワの夜空に輝く星を遠い目で眺めた。


隊員達が寝静まった深夜。基地外で武装勢力のオジサンが上げた奇声で目を覚ましたワタクシは、怪しいニオイを感知した。また、嫌なことが起こるかもと、そのまま寝るか、歩哨に立つのか悩んだ末に、名著「ビジョナリーカンパニー」の一節を思い出した。

 

事実は夢にまさる 

「岩を転がしてみたら、奇妙なものが下にいっぱいあったとする。そのとき、岩をもとに戻す人もいるだろうし、そこにあったのがとんでもなく恐ろしいものであったとしても、岩を転がして奇妙なものをしっかりと確認するのが自分の仕事だと考える人もいるだろう」

 

「ビジョナリーカンパニー②」113ページより引用

なるほど。ワタクシはいかなる時も基地を守らなければならない。疲れ切った体を起こして、隣で眠る傷病兵を転がしてみた。そこには、奇妙な世界地図が描かれていた。

 

傷病兵であるため仕方ないと、娘を着替えさせ、ベッドパットやらを洗濯している内にサマーワの夜は更けていった。


最近、ワイフ軍曹と娘氏とネコ氏の寝顔を眺めながら、安全基地とは何か?と考える。ワタクシは軍曹たちを守っているのか、守られているのか。

 

ワイフ軍曹は、NHKの集金攻撃が来たときくらいしか前線に立たないし、ネコ三等兵は、基本的に寝ているだけである。ただ、家族の寝顔を見ていると、この基地での激務も悪くないと思うし、基地外からの襲撃にも立ち向かう意欲が湧いてくる。

 

ワタクシが子供の頃、近所の竹やぶの中によく秘密基地を作ったものである。当時は、親の安全基地に守られていたからこそ、心から遊びに夢中になれたのだろう。日が暮れて家に帰ると、温かいゴハンが待っている。

 

娘氏の寝顔を眺めていると、そんな遠い記憶を自然と思い出して、心を安定させてくれるように思う。


たぶん、ワタクシは娘氏に守られているのだろう。そして、ワイフ軍曹はワタクシを毎日シゴき、厳しい任務にも負けない精神を養ってくれているのだろう。

 

おかげで、夜中に軍曹と格闘するときにも折れることはなくなったし、ワタクシはこれからも、何事にも決して折れることはないような気がする。

 

秘密基地は、雨が降るとすぐに崩壊してしまったが、毎日必死に働くこの安全基地をワタクシは、必ず守り抜こうと思う。そのためにも、岩を転がしたときに見て見ぬフリをした、奇妙な来月の家賃の請求書もそろそろ直視する必要がありそうだ。